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床に落ちたビスを拾うべきか、拾わざるべきか。(平成16年4月5日)
〜 忘れかけていたジャパンスタイルの原点 〜


 かつて組立工場の生産管理をしていた時代に、「床に落ちたビスは拾ってはならない。」と徹底したことがあった。ビスは、1本約1円。拾うのにかかるコストは、5秒かかったとして約2円。1本拾うと1円損する計算だ。

 1社下請けの製造業。品質も価格も納期も決まっている中で、私の仕事は、「生産効率を上げて、会社に貢献する」という1点を見つめた7年間だった。しかし、得意先社長の「それでは今月一杯ということで」の一言で、30年続いたその優良企業はあえなく幕を引いた。さまよい、そしてあえて同じ業界で独立し、立ち上がった。更なる効率を求めて。平成14年2月のことだった。

 この「売れるものづくりを目指すマーケティング研究会」は、その延長線上に、出会いや、エッセンスや、ヒントを与える、言わばものづくりのサプリメントとしての期待をもって、昨年6月に参加をさせていただいた。まさか、自分の人生を、生活を180度転換させるものだとは、微塵も予測しないでいた。

 エンジンの奥田社長始め、次から次へとこられる講師の方々のお話は、「何が売れるのか、その仕組みは?」と、先の期待をはるかに超える出会いと勉強になった。機が熟したと判断されたのか、藤塾長がついに禁断の一言を口にする。「金の話はよそう」。

 多くのメンバーは、いや少なくとも私は「金のため」に参加していた。どうやったら儲かるか、生き残れるか。そのために、いかにも「金のためではありません。」みたいな顔をして参加をしていた。その一言と同時期に、「実際に作ろう。」「成果を出そう。」となった。

 10月の研修で、木製のキーボードを提案して帰るその足で、会社の川野に相談した。翌日、さっそく心当たりをあたってもらって、サンプルのキーボードを家具職人「喜市さん」に送った。早いですね、とも言われたが、熱しやすく冷めやすい自分を知ってのことだった。案の定、日々の業務に追われて冷めていった。次の研修が迫っていたある日、喜市さんからの宅配便が届いた。あけると、なんとキーボードのモックアップだった。次の研修に間に合うようにと、108個の檜のキーを毎日、毎日磨いては貼り付けて、仕上げてくれたのだった。その苦労話はあとで聞いたが、それは見れば分かったし、まだ会ったこともない喜市さんの思いが何より嬉しかった。この時だった、あの塾長の話がストレートに響いた。「金の話はよそう。」心からそう思った。ほお擦りもしたし、抱いて寝た。

 その後、USB接続のキーボード1号の檜と2合のブナが完成し、同じ感動を味わいながら現在を過ごしている。498000円で購入したいとの申し入れを断ってしまったことが、その気持ちの表れだろうか。このレポートも、檜のキーボードで書いている。川野に言わせると、こういうときの私は、相当幸福感に満ち溢れた顔をしているそうだ。

 先日、ある会計事務所の代表と話す機会があった。その方の座右の銘は、ある自転車屋さんの一言だという。「迷ったら正邪で考えなさい。損得で考えると失敗するよ。」と。

 ある新聞のコラムが目に入いる。それは、「『縄文の心』を21世紀につなぐ」と題した、阿部千春氏の論説であった。それは、以下のような記述だ。

 「1990年代前半にバブル経済が崩壊し経済安定期になってから縄文文化が見直され始めた。(中略)一口で言うと、効率的な弥生型ピラミッド社会から、ゆとりある縄文型ネットワーク社会への変容である。」と。その縄文人は「送り」という儀式をおこなっていたそうだ。すべてのものに魂が宿っていると信じ、食料として命をいただいた後や、道具として不用になったときには、再生を願ってその魂を感謝とともに「送る」という行為を日常的にしていたという。「捨てる」ではなく、「送る」のだという。氏は締めくくる。「これは理屈ではなく、私たちの中に流れる縄文のDNAが何となく感じ取っているのだろう。そう考えると、現代の日本に縄文的感性が残っていることは幸運なことだ。」と。

 塾長が奇しくも、「ジャパンスタイルとはきっと、日本人が当たり前だと思っているのに、海外で評価されるもの。」と言われたことのひとつは、まさにこのことではないだろうか。
 
 私が、あの檜のキーボードに出会ったときの感動。これは、作られた精度や、素材や、存在感や、質感などをはるかに超越した“魂の響き”だった。それは、後から苦労話を聞かされるまでもなく、出会った瞬間に間違いなく私の魂を揺さぶったのだ。いまだ、作り手と会っていないのにだ。

効率主義の弥生文化と魂主義の縄文文化。効率主義のもとに忘れかけていた“魂の響き”こそが、我々ジャパンスタイルのものづくりではないのか。

 今、黙ってビスを拾う私は、この研究会に、運営の皆様に、藤塾長に、伊藤世話人に、川野に、喜市さんに、そしていっしょに学んだメンバーに本当に感謝している。「ジャパンスタイルとは、“魂の響き”」。かけがえのない、財産をいただいた。この1年足らずで、私の人生が、生活が変わった。

また、床に落ちたビスがこちらを見つめている。

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